2005.08.05

iTMSスタート、そして必要となる「Place Shift」権

ついに日本でもiTunes MusicStore(iTMS)が始まりました。料金の一本化をあきらめ、米国より若干高めの設定と、以前の予想通りの結末となりましたが、それでも予想の中では最良といえる形でのスタートを切った、といっていいでしょう。
詳しくは月末発売のアサヒパソコン誌で記事にする予定ですが、米アップルのフィル・シラー副社長は、「交渉の経緯は一切コメントできない。だが、結果には満足している」と私に説明しています。

やはり、アーティストと消費者両方に好かれたサービスというのは、幸運なスタートを切れるものです。

よく見ると、日本のiTMSはアルバム単位での販売が中心であり、アルバムでしか買えない曲や、アルバム向けのプレミアムコンテンツが充実しています。100万曲でスタート、とはいいますが、ざっと見た限りでは、アルバムでしか買えない曲が3割以上を占めているようです。
おそらくは、レーベル側が「アルバムという販売形態が破壊されることのリスク」をおそれたためでしょう。
実際にはそんなことは杞憂であり、むしろiMixなどを介した「曲単位で買えるからこそ生まれるバリュー」の方が大きいはず。米国でのiTMSのバリューチェーンは、ゆるいユーザー同士のつながりを介した曲単位でのレコメンドでできている、といってもいいのです。
まだ日本人は本当の音楽配信を知らない、そう言っても過言ではないでしょう。


さて、iTMSが始まるからこそ、避けて通れない問題があります。
先日もふれた私的録音保証金の問題です。
iTMSで買った曲をiPodに転送するのが「私的録音」である、という著作権者側の主張はやはり無理があります。今回の会見でも、スティーブ・ジョブズは「iTMSで買った曲は『所有』できるもの。あなたのものだ」と強調しました。買ったからには、正当に利用する権利はユーザーにある、ということです。それは当然です。

よく言われることですが、私的録音に関する話題がもめる理由の一つは、日本の著作権法上に「フェアユース」規定がないことです。複製権はどこまでも著作権者側に帰属するものであり、個人が利便性を高めるために複製することは、極論すれば著作権者側の「お目こぼし」により認められるにすぎない、というのが日本の著作権法のあり方なのです。
これは明らかに、利用者の権利が軽視されています。

ここで重要なのは、個人に「Place Shift」の権利を認めることではないでしょうか。
テレビを録画し、別の時間に楽しむ「Time Shift」については、著作権者側も会ってしかるべきものであり、排除するに当たらないものであることを認めています。それと同様に、購入したコンテンツを好きな端末/好きな場所で利用する権利が認められれば、問題の多くは解決します。
私的録音・録画のほとんどは、Time ShiftかPlace Shiftを目的としています。残るは、他人に渡すなどの明確な「複製」を伴う行為です。2つのShift権は著作権者への利益還元を伴わず、複製を伴う行為には利益還元が必要、というルールを設けるのが本来の姿ではないでしょうか。

実はこのPlace Shift権という考え方は、新しいものではありません。関係者によれば、国内で最初に私的録音保証金に関する議論が行われた時点で、考慮にあがっていた考え方だといいます。
13年前の法制化の時点で、導入の容易さのみがクローズアップされ、あまりに拙速に結論が下された結果、今に禍根が残っているわけです。

ある権利団体の関係者はこう話します。
「そもそも、楽に徴収するためにメーカー側補填、なんて税金みたいな仕組みにしたのが間違っている。権利範囲を明確にした上で、販売時にレジでチャージする方法にすれば、ユーザーからの反発も少なかったろうし、運用の柔軟性も上がっていたはず。ひどい制度を残してくれたものだから、パッチ当てが大変だ」

この際、指定対象の追加などという「パッチ当て」はやめて、基礎工事からやり直したらいいんじゃないんでしょうか。

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2005.06.16

ライブドアの無線LANサービスは成功するか?

昨日(6/15)、ライブドアが月額固定制の公衆無線LANサービス「D-cubic」を発表しました。

会見にて、同社の堀江貴文社長は、「どこでもブロードバンドが使えるようにしたい。誰かがやってくれると思ってたんだけど、やってくれないので自分たちでやることにした。携帯電話は高すぎる。(ソフトバンクの)孫さんがADSLで行ったことを、我々はモバイルで実現したい」と語り、サービスにかなりの労力と経営資源を投入すると宣言しました。無線LANアクセスポイントを都内の電柱に設置し、カバーエリアを面的に広げ、携帯電話的に接続できるようにすることになります。
うたい文句は、「(おそらく)世界初の面的エリアカバーを目指す公衆無線LANサービス」。

おっしゃるとおり。ホットスポットで無線LANが使える環境に慣れると、速度の面でも料金の面でも、PHSや携帯でダイヤルアップ接続する気になれなくなります。当初は山手線圏内だけとはいえ、実現されれば画期的なサービスとなります。

でも、です。
それって、初めてなのには理由があるんです。
「無線LANで面的カバー」は、大手企業からベンチャーまで、大量の屍が積み重なったハンバーガーヒルなのですから。

03年のMIS、04年のYOZAN、そしてソフトバンクBB。ヤフーBBの無線LANサービス「ヤフーBBモバイル」も、マクドナルドとの提携から始まったものではありながら、「最終的には携帯的サービスまで」(孫正義社長)という狙いを持ったものでした。
そもそも、ヤフーBB計画の母体である、98年にソフトバンク・MS・東京電力が画策した「スピードネット」構想も、個人向けサービスとしては、無線LANを使った公衆サービスだったのです。

うまくいかなかった理由はそれぞれにありますが、大きなものは2つあります。

一つめは技術面。2.4GHz帯の802.11系無線LANは、免許なしにラフに使える反面、干渉や輻輳に弱く、携帯電話向けの技術のように移動しながら使うのも無理です。電波の発振出力が弱いため、電柱などからでは、建物の中にも届きづらい。おそらく使用環境の9割では問題が出ないでしょうが、残りでどうなるかはやってみないとわかりません。
技術の改良も進んでいるため、他の企業が計画した時に比べ難点が減っている可能性はありますが、楽観は禁物です。

より大きなもう一つの問題は、実際にエリアをカバーするための策です。どの企業も設置場所に困り、結果的にファストフード店や喫茶店などに焦点を絞り、「点的カバー」に切り替えていきました。パソコンを屋外で使う人は少ないため、無理して屋外をカバーする必要が無かったという事情もあります。

ライブドアはパワードコムと提携、電柱にアンテナを設置することで面的カバーを狙います。彼らの自信の源は、電柱を本格的に利用するというところにあります。
アイデアは珍しいものではなく、ソフトバンクのスピードネット構想と同じといっていいでしょう。パワードコムは東京電力系の企業であるところも同じです。

これまで「電柱作戦」がうまくいかず、今回はうまくいきそうな理由がどこにあるのか? 現時点ではまだわかりません。おそらくライブドアは、法人向けサービスなどでパワードコムに対し、相当うま味のある条件を提示しているのではないかと思われます。

そしてもうひとつ、あまり報道されていない「秘策」があったようです。
記者会見の後に開かれたパートナー向けの事業説明会の中で、ライブドア側は「電柱」の提供先として、パワードコム以外にもう一つの企業名を挙げました。

その企業とはYOZAN。
元々は通信技術を提供する企業でしたが、2002年にアステルのPHSインフラを買収、その電柱にアクセスポイントを設置する形での、無線LANサービスへの参入を画策していました。まさにライブドアのビジネスプランと同じです。

ライブドア側の説明によれば、同社との間で、PHSで利用していたアンテナの設置位置を譲り受ける契約が進行中であり、すでにおおむね合意に至っているとのこと。現在YOZANは、無線LANを使った計画をあきらめ、新技術WiMAXを使ったモバイル通信サービスの事業企画を立案中です。そもそもYOZANが、破綻一歩手前だったアステルのPHS事業を買いたたいて構築をもくろんだビジネスを、ライブドアはさらに買いたたき、自身のビジネスに取り込んでいくことになります。

さて、ライブドアは屍の山を越えることができるのでしょうか?

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2005.05.11

次世代DVDはどうなるのか

本日の日経新聞・朝刊に「次世代DVDの規格合意へ」との報道が出ました。私も各社に確認を求めましたが、「なにも決まっていない」というのが公式なコメントでした。

ただ、あるメーカー(といっても、今回の当事者は主に3社であり、そのどれかということになるわけですが)の担当者は、「時間的な余裕がない中、3社がいまだ交渉を”続けている“いうあたりから、感触を予想してもらえれば」と語っており、全体のベクトルとしては遠からず合意もあり得る、ということなのでしょう。

ただし、合意内容がどうなるかはまた別の話。落ち着く先はほぼ2パターンしかあり得ないのですが、そこへスムーズに到達するのはかなり難しい状況です。

理由は、ディスク保護層を0.1mmとするか0.6mmとするかが、根本的な争点となっているからです。双方とも、生産性や将来性について様々な発表とコメントを残しており、単純に「どちらがいいか」と結論を下せる状況ではありません。一般には「生産性重視」のHD DVDと「将来性重視」のBD、と言われますが、単純にそれだけとも言いかねます。私個人は、将来に向けたグランドデザインを描く上での「思想の違い」に根ざす、宗教論争に似た部分も感じています。根本的には、どちらの思想が間違い、というわけではないからです。(実際、記事にならないレベルでは、すさまじいまでの舌戦が行われていることも少なくありません。)

宗論はどっちが負けても釈迦の恥。というわけで、規格が統一されるのは誠に結構なことです。

以前、ソニーのドライブ開発に携わる技術者にインタビューした際、このようなコメントが出てきました。
「記録型DVDで規格が割れた時、残念には感じたが、その一方、『すぐにマルチドライブが作れるから、深刻なことにはならない』と思った。だが今回は違う。技術者だから無理という言葉は使いたくないが、かなり困難。安易に規格を割ることはできない」

次世代DVDのニュースを追いかけている方には解説不要だと思いますが、BDでは0.1mm、HD DVDでは0.6mmが採用されています。両者の間では、記録・再生用のピックアップを作るために必要な光学的性質が全く異なっており、簡単に「間をとる」ことはできません。
0.3mmで合意、との噂が流れたことはありますが、HD DVD側・BD側両方からはっきりと否定されていますし、2つの理由からあり得ません。
一つめは開発の速度。双方が再度技術開発を行わねばならず、製品化までかなりの時間がかかることとなります。現在ですら製品化スケジュールが遅れ気味であるので、論外なのです。
二つめは技術的に中途半端であること。DVD同様0.6mmであるため生産性が高い、というHD DVDの利点も、大容量で転送速度が速い、というBDの利点も、同じようにいくらか削がれると考えられます。文字通り「数字で間をとる」のでは、この際意味がないのです。

というわけで有望視されているのが、日経の記事などで報道されている「物理層は0.1mmでウォブルグルーブ記録、処理技術にはHD DVD譲りの東芝系技術」という組み合わせです。BDを主導するソニー・松下側から見ると妥当な案ですが、東芝側から見れば、物理層で譲ることは宗旨替えにも等しく、簡単に飲めるものではありません。(そのため、東芝側の報道否定コメントは0.1mm導入を強く否定する形になっているわけです。)

私の観測としては、やはり報道のような案が強く提案されており、有力であるのは間違いないと考えます。ただ、ことが「宗教論争」であるだけに、結論は単純にはいかないのです。また、最終的にパテント収入をどう分け合うか、という問題も残っています。(この点については、日経エレクトロニクス誌 5/9号の記事にうまくまとめられており、参考になります。)

実際には、もう一つ可能性の高い解決策があります。HD DVDのROM規格のみを、BDに「もうひとつのROM規格」として取り込んでしまうことです。
前出のソニー技術者の言は、正確ではありません。BDのドライブであっても、通常はDVDの書き込みと読み込みのために、0.6mm層向けのピックアップが併せて組み込まれます。HD DVD方式での書き込みを捨て、こちらにHD DVD-ROMを読み込むピックアップを採用すれば、容量と将来性が重視される記録型メディアとしてBDの、低コスト性が重視されるメディアとしてHD DVDのメリットが生かされることになります。記録型メディアとしては併存しえなくとも、別の形では併存できるわけです。

ただし、こちらにしても高コスト構造であることに違いはない上、双方に生産性と記録方式の両面で「負け」を認めさせねばならない、という大問題が存在します。

なお、東芝側はHD DVDを三層化、容量を30GBから45GBに増やすことに成功したと発表、これをもって「統一交渉は長期化する」と報道する向きもありますが、私はほぼ影響なしと考えます。
この技術発表はあくまでROMに関するものです。容量で問題となっているのは主に記録型ディスクについてであり、問題が解決したわけではありません。「BDに比べ多層化に弱い」という指摘に対する反論として発表されたものでしょう。同様に、「HD DVDに比べ高コストである」と指摘されているBDは、5/11、生産性の向上についてコストの実数を挙げた発表を行う、と聞いています。要は、いまだ主導権争いの「宗論」は続いているのです。

BD普及のカギを握るPS3のお披露目は、ついに来週月曜に迫ってきました。私も現地へ取材に行きますが、そこで(もしくはそれまでに)なにかが公開されることになるのでしょうか。
それでなくともネタは満載であり、うれしい悲鳴というところです。

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2005.04.18

次世代DVD・ハイビジョンはD端子で見れるのか

4/15の記事の続きです。
4/14に、次世代DVD用の著作権保護規格「AACS」の技術ドラフトが公開されました。(不覚なことに、今日まで気がついていませんでしたが) すでにこの情報はつかんでおり、「公開予定」と書いていたため、出てこなかったらどうしよう……と思っていたのが偽らざる本心です。

結論からいえば、AACS ver. 0.9には、アナログ信号によるHD映像出力の禁止は盛り込まれていません。ある国内家電メーカー担当者の話では、「ハリウッド側との落としどころがまだ見つからないため、ドラフトには入っていない」とのことです。
ただ、別の見方もあります。「そもそもあの件は、AACSで規定するものではない。各国の法律など、別の枠組みと絡む」と話す関係者もいるため、今回ドラフトに盛り込まれなかったからといって、「アナログでのHD出力はOK」といえるわけでもありません。

日本国内では、法律や規格は「決まるまではコメントせず、決まってから問題視する」という形を採ることが多いようですが、私は間違っていると考えます。
本当に問題ならば、決まる前に疑念を提示し、策定する側に「なにがどういう疑念を産んでいるのか」を理解させ、正しい方向に議論を持って行くことが重要です。
(疑念が疑念のまま終わり、ムダに騒いだことになったとしても、それはそれで結構なことではないでしょうか。覆すこともできないレベルで決まってから嘆くだけでは意味がないでしょう)

どっちに転ぶとしても、これから大型テレビを買う方は、HDMI付きを選ぶことをお忘れなく。

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2005.03.12

ウォークマン携帯と著作権保護の「速度制限」

これもCeBitネタ。ウォークマンブランドのGSM携帯展示の記事です。ITMediaより。

http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0503/11/news028.html

デモ機では著作権保護がない、というような記述ですが、製品版が「単なるストレージクラス・デバイスに素MP3」になるかは不明。私的には”それはナシ”にbetします。

3/9付けの記事で、ソニー関係者が著作権保護を道路の速度制限にたとえていた、という話を書きましたが、その辺をもう少し補足しておきましょう。
あのときには、アップル以外のメーカーに関する言及もあったのです。「まあ、僕らやアップルが50km制限を守る横で、韓国・台湾メーカーなんかは120kmでぶっ飛ばしているわけだけど」
著作権保護なしは採れない、ということを指した冗談ですが、逆に言えば、最低限の著作権保護は必要、と考えているという証でもあります。
彼らの規定する最低限の著作権保護とは、端末内では楽曲は暗号化されている、ということ。暗号化がされていないと、端末を人に貸した時、楽曲を無限にコピーができるため、それは避けよう、というコンセンサスのようです。自分が使う分には、不便さを感じにくい、ああそうか、と納得しやすいところです。ただ、「保護」としての実効性には疑問も出る、微妙な線でもありますが。

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2005.03.10

ソニーからDivX正式対応のDVDプレイヤー

なぜかソニーネタが続きます。

CeBit前のブリーフィングでの発表事項。筆者は笠原一輝氏。BDがらみはまた別の機会として、注目は記事一番下で公表されている、DivX正式対応のDVDプレイヤー。ソニーから出るとは、と驚く人もいるでしょう。国内の予定はないようですが。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0310/cebit02.htm


私はこの件を半年以上前から知っていました。同社のBD事業に関する取材の中で、ぽろっと「DivXをやっている」という話が出てきて、心底驚いたものです。
取材の本筋ではないこと、同社がその時点での公開を望まなかったことから、記事化せずにきましたが、製品も公開になったことだし、もう時効ということで。

同社技術系重役は、この件をこう説明しています。
「BDとの絡みなど、別にフォーマット政策上の意図があるわけではない。メディアおよび製品価値を高めるには、一般的なファイルフォーマットには対応しておくべきだな、というだけの話。うちがやるなら正式なライセンス製品以外あり得ないし。BDでH.264やVC1に対応するのも、そういう文脈」
驚くほど素直で単純な理由です。しかし、「ソニー内部からこんな話が」と驚かれるあたりが、同社のジレンマの根が深いところで。

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2005.03.09

ソニー首脳陣交代

すでに2日前のことですが。
私も会見に参加していました。中鉢良治新社長(6月22日より)が、かなり固くなっていたのが印象的でした。

http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200503/05-014/index.html


さて、ソニーの不振というと、原因が色々取り沙汰されています。どれか一つではなく、そのどれもが合わさり、ブランド価値を下げているのは間違いありません。

その上で、自分が考える「退陣」の大きな理由を一つ。
私は、ちょうど1年前、ソニーに関する特集記事を執筆するため、ソニー関係者への取材を重ねていました。その中には、今回退陣した安藤国威・現社長も含みます。(記事に興味がある方は、アサヒパソコン誌・2004年5月1日号を、どこかで探してご参照を)

その時感じたのは、彼らがかなり正しく現状の問題点を把握していた、ということです。

例えば音楽関係。
ソニーといえば、圧縮形式はATRAC3・著作権保護はガチガチ・メモリースティック以外認めない……という印象がありますが、実は、昨年春の段階で、我々の感じる「とにかく保護」の方針が貫かれていたのは、日本だけでした。欧米ではすでに、iPodに習い、転送回数の制限を含めた著作権保護に関してはかなり譲歩し、圧縮形式もMP3を認めていました。(それが商品として、きちんとアピールできていなかったのが不幸なことですが。これは、いまだに続いています)
日本だけ蚊帳の外であった理由は、すでに国内でレーベルゲートという厳しい著作権保護を課したサービスが始まっていたためです。
ソニー関係者は日本の状況を、「50キロの速度制限の道を、いついかなる時も、1キロもはみ出ることなく、50キロを守って走るようなもの。アップルは、『常識に従って、すこし出し過ぎても捕まえないよ』という方針」と称していました。著作権保護のあり方についてのコメントとしては、かなりスマートで納得しやすい解釈です。
そのため安藤社長はiPodを、「厳密すぎる著作権保護という”呪い”から解きはなってくれたのはアップル。iPodもCMを含め、すばらしい商品」と高く評価していました。

ところがソニーは、問題を把握していたにも関わらず、追いつかねばならない1年の間に、まったく解決策を打ち出せていません。これは、現状を理解していないこと以上に愚かなことです。その後どうなったかは、ご存じの通り。
テレビやDVDレコーダーなどのシェア拡大に力を尽くしたものの、業績とブランド力回復には及ばなかったようです。優先順位を間違った、ということでしょう。

リストラや交渉を含めたマネジメント力が高い、ストリンガー氏が後継に指名されたのは、情報をまとめて正しい優先度をつける、という意味があるのでは、と考えます。

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