というわけで、E3取材から帰国しました。

帰国後も、E3関連記事の執筆に追われています。
すでにAV Watchでの連載は掲載済みですが、このほか、月刊宝島(25日発売)・ウルトラONE(24日発売)に、E3レポートを掲載予定です。AV Watchでも書いていない話も入っておりますので、よろしければご購入ください。
大きなネタは記事に残しておかねばいけないのでここでは書けませんので、とりあえず感想的なものをお伝えしておきましょう。
今回のE3を一言で表すなら「技術に魔法はないが、アイデアと努力は魔法を産む」というところです。
話題のWiiコントローラーは、秘密が明かされてみると、特別な技術を使ったものではありませんでした。画面のポインティング精度、モーションセンサーともに、すでにあるものと大差ありません。実際のところ、「技術デモ」として展示されていたものでは、敏感すぎたり鈍すぎたりで、今ひとつ使いづらい印象を持ちました。
ところがです。「ゲーム」として発売が予定されているタイトル、例えば「Wii Sports」や「マリオギャラクシー」、そして「ゼルダ」では、なんともいい具合にチューニングされ、快適で楽しい操作性が実現されています。まさに「任天堂の魔法」といった印象です。
Wiiはよく「画期的なゲーム機」と言われます。でも、それは正確ではありません。
やっていることそのものは、これまでのガンコントローラやXavixと大差ないのです。
でも、出てくるものは全く違う。うまく組み合わせた上で、ソフトを作る側がきちんとしたチューニングを行うことで、受け取る側には「画期的」と思える製品が提示できる。
そういう意味では、任天堂はとてもアップルに似ているな、と思います。
一度は他社が手がけ、本当の魅力を引き出せなかった技術に着目し、磨き込むことで、他社にはない魅力的な製品を生み出すのですから。なにより、「持っている人、やっている人が楽しそうに見える」演出は、すばらしいと思います。
逆に言えば、Wiiコントローラーの魅力を引き出すチューニングは、まだ任天堂の手にしかないようです。サードパーティ製のソフトでは、どうも今ひとつ気持ちよさが演出できていない。(「ドラゴンボール」で、コントローラーを、引いて押し出すとかめはめ波、なんてUIはおもしろいんですけどね)
魔法は簡単に他人には伝えられない、ということなのでしょう。
PS3の新コントローラのモーションセンサーが「おもしろそうに見えない」のは、同じような理由によるのです。
さて、Wiiに並んで話題だったのは、PS3の価格。
やはり「高い」という声が圧倒的ではあったのですが、「だから売れない」という流通関係者が少なかったのも、また事実です。むしろ、「PS2がまだ売れているから、ゆっくり切り換えていけばいい」「2年サイクルで、PS2>Xbox360>PS3みたいなトレンドになるとおもしろい」という声が聞かれたのです。
おそらくは、欧米市場において、PS1>PS2時のPS1に比べ、PS2が元気である、ということがあるのでしょう。
「売るものはあるから、じっくりでいい」というところでしょうか。
まあ問題は、その「じっくり作戦」を許容できるか、というところなんですが。
8日の会見後、SCE関係者に、ずいぶん「価格」について聞かれました。「高いと認識されている」ことは、当然彼らにとっても気になる事実なのです。そこで、いくつか今後の話も聞いているのですが、それをお話できるのは、もうすこし先になりそうです。ご容赦を。
一点だけ気になるのは、「PS3が狙うのはコンピュータ」というあたりです。どうも、誤解が広がっているようで。
これはなにも、「ポストPC」を狙う、ということではありません。
以前から、久夛良木健社長は、私にこう語っています。
「別にPCにするつもりなんてない。道具としてのPCはすばらしい。だから、PC的に使うならPCでいいんだ。PC的なソフトをプレイステーション向けに作りたい、ということを止めはしないが、僕らはやらない」
だから、Linuxが載るからといって、通常のデスクトップ・ディストリビューションが組み込まれてPCの代わりに使える……なんてことはまずないのです。(そういうこともできるでしょうが、少なくとも、メインの機能にはならない。そんなものが組み込まれても、別に欲しくないでしょう?)
ただ、「PCでないパーソナル・コンピューティングデバイス」を狙う可能性は大いにあります。
いわゆる「パソコン」と、個人に楽しみを与えたり、力をエンハンスしたりするための「パーソナル・コンピューティングデバイス」とは、明確に区別されるべきです。
例えば、ケータイは「パーソナル・コンピューティングデバイス」であっても、PCではない。PDAや、DVDレコーダーも同様です。
マイクロソフト自身も、同じ問題にとらわれています。個人をもっと便利に、楽しくするためにコンピュータを与えたい、とは思うものの、そのデバイスは「PC」だけではない。だから、今までのPCに様々な要素を追加した「新コンピューティングデバイス」、たとえばタブレットPCなど、を提示しています。
我々も、「PC」という言葉にとらわれず、出てくるものを想像する柔軟さを持つことが必要です。
だからといって、出てくるものをすべて許容する必要などどこにもありません。
SCEは、PS3が「エンターテインメントコンピュータ」として画期的である秘密を、まだ隠しています。隠れているものに消費者に「欲しい!」と思わせる説得力があるのかどうかが、気になるところです。
では最後に、会場で私が気になったソフトを。
PS3用として一番興味深いのは、カードを使ったゲームである「The Eye of Judgment」。どうやって商品までもっていくのかわからないところも含め、興味深いところです。
あまり話題になっていませんが、コナミのFPS「CODED ARMS ASSAULT」も、気になったタイトルの一つです。プレイアブルでもなく、画質的にももう一歩、と思わなくもなかったのですが、そのビジュアルセンスを評価したいところです。(FPSというと血みどろでリアル、というところから離れたセンスが、単に好みだ、ということでもあるのですが)
画質はともかく、動きについては、「Motor Storm」もなかなかでした。さすがに、昨年のE3で公開されたムービーそのまま、とはいかなかったようですが。
画質面で評価するなら、UBI Softの「Assassin's Creed」がダントツ。ゲーム性も含め、どう仕上げてくるかが気になります。
開発状況について、SCE・川西本部長は、「シェーダーの使いこなしについては、少々地域差が出ているような気もする。SPEは、フィジクスに使われるのがほとんどのようだ」と語っています。
確かに、PS2的な開発から抜け出せない日本メーカーがあったのも目立ち、日本メーカーの奮起に期待したいところです。
Wii用としては「Wario Ware: Smooth Move」(メイド・イン・ワリオのWii版)のバカバカしさ(ほめ言葉)を、360用としてはATARIのMMOカーレース「TESTDRIVE UNLIMITED」のダントツの画質を「注目作」として挙げておきます。
どちらも、ソフトとしての「作り込み」から生まれる驚き、という感じでしょうか。