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2010.04.15

「iPad vs. キンドル」、4刷&eBook版発売決定! ですが……

本日のお知らせは表題の通り。

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ありがたいことに、「iPad VS. キンドル」4刷り(しかも、けっこうな部数での)増刷が決定しました。
筆者としてもあまり予測していない速度での売れ行き、ご評価に感謝いたします。
これにあわせ、(一部ではとても評判の悪い)帯も左記のものに変更になります。
一般店頭での品不足なども、なんとか解消の方向に向かうと思います。


さて、本日最大のトピックは「eBook版」の方です。

「eBookの本なのに、それが紙なのはかっこわるくね?」と指弾されていたのですが、ようやくeBook版を発表できます。

といっても別に、急に作ったわけではありません。
実は紙の書籍版が販売される前から、(それこそ、最初の企画段階より)eBook版の準備はずっと進めていたのです。
内容については、紙の書籍版と同じものになります。

書名:『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』
著者:西田 宗千佳
発売日:残念ながら未定、でも近日中になんらかの詳細を発表(
本来は、iPadの日本での発売日である4月末の予定でした
価格:
987円(本体940円+税、ちなみに紙版は1500円)
発売元:ボイジャー株式会社
取り扱いeBookサービス:理想書店
フォーマット:ドットブック形式、買い切り
対象機器:
iPad、iPhone、PC/Mac
言語:
日本語(縦書き)

担当編集者との打ち合わせの中で、こんな話も出ました。
「PDFのタダ配り、やりますか? 発売日に合わせて」
それも悪くはないと思いましたが、やりませんでした。
編集者も「私もそう思います」と同意してくれました。

いや、別にタダで読ませたくない、という話ではないのです。

私たちがeBook版で重視していたのは「普通にeBookを買う未来がどんなものを知ってもらう」ことだったからです。

現状、eBook(PDF版など)は、「広告宣伝目的で配布する」ものが中心です。
ビジネス判断として、それはけっして間違っていない。いい方法だと思います。

でも、それは究極的には違うと思っているんですよ。

拙著をお読みいただければご理解いただけると思うのですが、アメリカでeBookビジネスが花開き、今後日本でも大きなビジネスになると期待されている理由は「きちんとコンテンツを、対価を払って買ってもらえる」からです。
極論、無料で見せるなら別にWebでもいい。
でも、それでは「読書体験」として問題が大きいし、広告だけでビジネスは成立しづらい。だから「普通にeBookを読む」こととは違うと思うのです。

そこで、我々が考えたのは以下の条件でした。
・レイアウトなどが、きちんと、紙に近いクオリティで読めること
・eBookリーダーで読みやすい形で読めること
・できれば文字サイズが可変であること
・eBookリーダー以外でも、1度買えば同じコンテンツが読めること
・マーケティング策としてでなく「本を買う」体験ができること
・そのために、価格は「みんながeBookとして納得してもらえそうな価格」であること

それを実現するために考えたのは、
・KindleやiPadなどのeBookリーダーで、「買った物」が読めるようにする
・同じeBookをiPhoneやパソコンでも読めるプラットフォームを選ぶ
・縦書きを含めたフォーマット再現ができる
・決済機能がある
という条件でプラットフォームを選ぶ、ということです。

紙の本と同時に出さなかった(出せなかった)のは、そのための条件が整っていなかったためなのです。
Kindleは理想に近いeBookリーダーですが、「日本語」をきちんと扱うのが難しい。日本向けの出版ビジネスも、現状では「テスト」の域を出ていません。

Kindletest

(実は自分でKindle版を想定したコンテンツを写真のように「手作り」し、版元と協議もしました。でも、縦書き日本語は「画像」として入稿しないといけないので、読みやすいものを作るには無理があり、今無理するのは問題だ、との結論に至りました)

そこで白羽の矢を立てたのが、ボイジャーの運営する「理想書店」での販売です。
ボイジャー・萩野社長からは、販売開始前より「ぜひ理想書店で」とお誘いをいただいていました。しかも、iPadに向けたビュワーの開発も行われていました。
iPadなら、書籍発売から1カ月以上時間がかかるものの、きちんと前出の条件を満たすことができる。生っぽい話をすれば、話題性も十分。
だから我々は、「理想書店」経由で「iPad」を想定し、iPad発売日を狙ってeBook版の発売をスタートする……つもりだったのです。

iPadの日本発売が延期になってしまったため、現在、iPad版の発売(すなわちビューワーの公開日)まで含め、ボイジャーと版元の間で検討が進められています。詳細はまた追って発表とさせてください。

実は、eBook版作成に際し、問題だったのは「価格」です。
今回は、紙の場合「1500円」で販売される書籍を、「税別940円(税込み987円)」で販売することとしました。
打ち合わせ内では正直、もっと高い価格も出ましたが、私はNoと言いました。また、紙で1000円を超えるような書籍を、キャンペーンの形でなく、ずっと100円・200円で売ることも断固Noです。出版社と筆者が「持続的にビジネスができる価格」でないといけないからです。

今後、いろんな方がeBookを売ることでしょう。旧刊を出す場合もあれば、新刊と同時に出る場合もあると思います。「新刊と近いタイミングで、紙版と同じものを売る」場合でも、やはりある程度安くないと御納得いただけないだろうな……と思います。
ここでなにもしないと「紙と同じ価格で」と言い出されかねないので、ここで「このあたりが納得していただけるとろでは?」ということを示したい……と考えた上での価格決定です。どこが削れてこの価格かは、計算していただければなんとなくわかると思います。(いうまでもありませんが、買い切りですので、一度ご購入いただければ、デバイスが変わっても、時間が経過しても買い直しは不要な予定です。)

正直、もっと色々とやりたかったことはあります。
「複数のデバイスで読める」「文字サイズ可変」くらいしか、デジタル的な仕組みは入れていません。(見つかった誤字については、修正をさせていただきました。汗顔の至りです。すみません!)

 
でもね、まずはここからスタートさせてください。
ソーシャルな本も、アニメーションがたくさん入った本も可能性はありますが、「どんな形が最適か」は私にはわかりません。多くの人にもわからないでしょう。正直、手の込んだしかけをするだけの時間がなかった、ということも無視できません。(主に作業や交渉を担当したのは版元とボイジャー側で、私への負担はなかったので、大きなことは言えませんが)
まずは「読みやすい本をeBookとして提供すること」がスタート。
未来はその後にさせてください。

紙の書籍版をお持ちの方は、カバーをめくってみてください。裏表紙の右端に、思わせぶりな数字があるのにお気づきいただけるかと思います。そこから、察していただければ……

追伸:
「日本の出版社はデジタル版が出したくないようだ」と憤慨している方も少なくないようです。
でも、私が取材する限り、「デジタル版を出したくない」と言っている出版社なんて(ゼロではありませんが)ほとんどいません。新聞社にも、電子化を検討していないところはありません(驚くくらい真剣に検討してます、みなさん)。今回の件にしても、版元からNGは最初からありませんでした。(もちろん、言えない範囲での苦労はありました。でもそれはどんなビジネスでも同じでしょう?)
拙著でも書きましたが、日本語でのデータ化ルールも、収入の分配方法も、さらには「望まれるべき価格」も決まっておらず、iPad以外の端末が日本できちんと販売されていない現状で、紙と同レベルの量の本を、同じスピードで出そうという方が難しい。
各種業界団体にしても、別に「出したくないからみんなでサボタージュ」なんて考えてはいないのです。決めなくちゃいけないことを決めないと、Amazonともアップルとも交渉なんてできないわけですから、それをやろうとしているだけ。
もちろん、「他社・筆者に抜け駆けされたくない」という意識は大きいのは間違いないでしょう。でも、それってそんなに悪いことでしょうか?
世界に先駆けてeBookビジネスを立ち上げ、出版社が「抜け駆け」すべき最良のタイミングは、2004年に過ぎ去っています。それをスルーしたことはとても間抜けで、恥ずべきことです。しかしアメリカでAmazonが成功した今、いまさら半年遅れることを嘆いてもしょうがない。だって、どうせ今年の後半にならないと、iPad以外の日本語対応eBookリーダーは出てこないのですから。
日本でeBookリーダーが登場した時、本や新聞、雑誌がまったく揃う様子を見せなかったら。
その時は、出版社を指弾してもいい。僕もします。だからiPadの発売に合わせて、先に出します。料金も、密室で決められたくないので前例を示します。
でも、ルールも決まってもいないのに、外野から現場のやる気をそぐような物言いを、僕はしたくはありません。
もちろん、抜け駆けしたい出版社は応援しますよ。

追伸2:
「著者がeBookストアに、自分の作品を出せばいい。出版社や編集者はいらない」という論にも、僕は賛成できません。
だって、筆者だけでできる本や記事なんて、ほとんどないのですから。
もちろん、著者と共同作業をする編集者が「既存大手出版社」の所属である必要はない。
でも、販売の面でも、製作の面でも、果ては人間関係の面でも、筆者を支えてくれる人々がいないと、記事は世の中に出ていきません。私なんかの場合、一人では原稿は書けても、絶対に本にはならない。
ノンインテリジェント・ハブのようにデータの受け渡しをするだけの編集者もいますが、私のつきあいのある編集者は、真摯に記事という「商品」に向き合っています。
彼らの働きがなかったらできなかったものを「自分が著作権を持っているから」だけで電子化するのは筋が違うと思うし、彼らなしで「いいもの」ができるわけでもない。
もっと言えば、多くの著者にとっては紙かデジタルかは関係なく「書く」だけ。デジタル化は体裁と売り方の問題である場合が多く、よほどの場合を除き、筆者だけではどうにもなりません。
「筆者の名前で、お金の出所も筆者で、販売直前までの作品ができる」のは、すでに成功した筆者がプロダクション・出版社的にビジネスを展開する場合か、まだ世に出ていない筆者がすべてを自分でやるか、京極夏彦氏のようなスーパーマンで全部できるか、といったところでしょう。少なくとも筆者はそのどれでもありませんし、多くの筆者もそうでしょう。
同人誌にだって、自分では書かない編集担当がいたり、売れ筋同人誌向けの「プロ編集」がいたりします。効率的に量を作って流通させるには、やっぱり分業が大切です。
紙の時代と、ビジネスの形は変わるでしょう。その中で大手出版社のいくつか、新聞社のどこか、数多くの書店や流通は業態変換を余儀なくされるはずです。
しかし、「権利を持つ筆者だけで、中抜きで本を作るのが基本」の時代にはならないだろう、と思うのです。

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