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2006.12.30

戦いは数だよ

久々の更新が、年内最後の更新となります。

今年は、いろんな意味でプラットフォームがらみの取材の多い年でした。
ゲーム機や次世代光ディスクの話になると、なにかと「どちらが技術的に優れているか」「どちらが良いものなのか」という話になりがちですが、本質はやっぱり「数」。特に現在は、大規模生産と高度にマネジメントされた流通の力を使った、「垂直立ち上げ」が基本です。となると、短期的な生産性や技術的優位性よりも、「どれだけ売ったか」「売っている最中にどれだけ損をしないか」というあたりが大きくものを言ってきます。

例えばニンテンドーDS。
「新しいゲーム性を産めるハードデザインが評価された」と言われることが多いのですが、それはあくまで副次的な要因に過ぎません。最大の勝因は、「以前ならゲームとしては売れなかったコンテンツを売る道筋を作ったこと」といえるでしょう。脳トレはいわゆる「シリアスゲーム」の一種であり、皮肉な言い方をするなら、「そこそこ役に立つコンテンツに、ゲーム的なおもしろさを付け加えて売りやすくした」「シンプルなゲームは売りにくいが、それが”役に立つ”となれば売れる」という、ゲームの外の仕組みが最大限働いたから、といえるわけです。
プラットフォーム・ビジネスは普及したもの勝ちですから、性能が少々悪かろうとも、ソフトを作る側はよりビジネスになる方を選ぶのが必然。となると、質の良いソフトも集まってくる、というわけで。
(「DSのユニークさにひかれてゲームクリエイターの作った」初期のタイトルはあまり売れず、むしろゲーム畑以外からの作品がDSをリードしたことは、現在のゲーム業界を見る上で、少々皮肉な現実です。仮にWiiがヒットするにしろ、それを可能にするのは「ゲーム好きが評価するゲーム」ではない、と私は確信しています)

他方で、海外ではPCやXbox 360、PS3といった高度な機器向けのゲーム開発が進んでいます。開発者の地力は、正直差がつくばかり。「ロストプラネット」で超絶クオリティを実現したカプコンや、まだ未整備な開発環境でGTHDを作り上げたポリフォニー・デジタルなどの例外を除くと、海外に追いつけるメーカーはどれだけあるのか……と少々不安になります。


今年ヒットしたものといえば、USBを使ったPC用のワンセグチューナーがあります。
実はこの製品がヒットした裏には、あまり知られていない事実があります。それは、ワンセグチューナーが「ARIBのご意向」に沿っていない、ということです。
B-CASカードがないと映らない地デジと違い、ワンセグはB-CASが無くても映ります。現在市場に出ているPC用チューナーのほとんどは、(一応著作権保護の仕組み的には準拠しているものの)ARIBの意向の外で作られた、いわば「勝手商品」なのです。(なので私は、夏の段階までは、ここまでUSBワンセグチューナーがたくさん出るとは思っていなかったのですが)

携帯電話や大手PCメーカーは、ARIBとも深くつきあっている関係上、B-CASがないとはいえ、勝手に製品化することは自粛してきました。しかし、PCの周辺機器メーカーには、そんな義理はないわけです。韓国から持ち込まれたパーツを元に、自由な製品開発が行われてきました。
このことは、ARIB内部では大問題となっているようです。QVGAレベルとはいえ、認可を経ない受信システムが大量に販売されるのはいかがなものか……というのが彼らの思惑です。

しかし、実情はどうでしょう。自由な製品開発で多種多様な製品が出た結果、PC用ワンセグチューナーは今年のヒット商品の一つとなりました。しかも、「ワンセグから映像が大量に流出した」などという話もついぞ聞きません。有利な位置にいたにもかかわらず、日本の家電メーカーやチップメーカーは、利益を得られなかったわけです。
(ただ、ヒットしたとはいえ、PC用チューナーはニッチな存在。数自身は、ワンセグ対応携帯電話の方がはるかに多い、のも事実です)
地デジやBSデジタルの場合、さすがにワンセグと同じセキュリティ、というわけにはいかないでしょうが、「メーカー同士で自主規制しあい、その中でしか出せない」状態であることが、日本のデジタル放送市場そのものを萎縮させている、と思うのです。
(結局、コピーワンスの見直しも「来年3月から改めて議論」という、なんとも情けない状態で年を越すことになってしまいましたし)


というところで、年内はこれにて失礼いたします。来年は、1月6日からのCES記事でおめにかかることになります。来年もよろしくお願いいたします。

追伸:ちょっとだけ宣伝を。

1月17日、新社会システム総合研究所の依頼により、「次世代ゲーム機の市場分析」に関する講演を行います。あくまでビジネス向けのもので、講演料もなかなかお高いのですが(といっても、私の手にはさほど入りません)、事業上必要な方の中でご興味がある場合、お申し込みいただけると幸いです。
http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_07022.html

なお、来年は、年初より数冊の書籍の刊行を予定しております。詳しい情報は、また追ってお知らせいたします。

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