E3・WinHECが終わって
怒濤の5月も過ぎ、海外出張の宿題(汗)も終わり、そろそろ落ち着いてきました。
商業誌向けの記事も露出しきったところなので、書ききれなかった情報などをお伝えしていきたいと思います。
まず最初に、「ポータブルXbox」について。
すでにAV Watchの原稿でも触れましたが、WinHECにて発表はありませんでした。そもそも、短期的に見た場合、ゲーム機としての存在および発表には疑問を差し挟んできたわけですが、まさにその通りだったわけで。
予想と違ったのは、「AV機器」としての発表もなかったこと。冷静に考えると、AV機器として展開する場合、基本的にソフトメーカーであるマイクロソフトが、リスクを負ってまでCPUを購入してハード生産に乗り出す必要はないため、トランスメタと協業する意味もないわけですから、今回の情報とは符合しません。
というわけで私の結論は、「仮に計画があるとしても、少なくとも来年まで、ポータブルXboxが正式発表されることはない」というものです。
今回のトランスメタとのアライアンスは、あくまで、低所得国向けのプリペイドPC「FlexGO」用のプラットフォーム、ということのようです。(ただし、そういった用途にLongRun2が必須とは考えづらいこともあり、すべての疑問が解けたわけでもないのですが……)
次に、PS3について。
5月24日発売のウルトラONE誌(また休刊最終号。。。)にて記事を書きましたが、その中で、PS3における「互換」に関し触れました。この点に関し、きちんと言及した記事はほとんどないようですから、もうすこし詳しく解説しておきましょう。
PS3には、PS2のEE+GSが、ほぼそのまま搭載されます。これは、PS2のタイトルを正常に動かすためのものです。PS2に、PS1のコアチップがI/Oプロセッサとして組み込まれていたことを思わせる内容ですが、PS3のそれはちょっと違います。なにしろ、「PS2互換」以外の機能は持ち合わせていないようなのです。
元々SCEでは、PS2互換をソフトで実現させる予定だったようです。ですが、エミュレータの開発が難航し、100%に近い互換性を実現するには時間が足りない、と判断されました。
そこで出てきたのが、EE+GSをそのまま搭載する、という構造です。コスト的にはとても厳しく、PS3の価格上昇の一因になっていることは間違いありませんが、SCEとしては、「100%に近い互換は必須」であるため、こうせざるを得なかったわけです。今後、ソフトエミュレータの開発にめどが付き次第、PS3の設計は変更され、EE+GSを取り外して低コスト化する予定だといいます。
そして実は、「PS3」用タイトル自身にも、「互換」に関しては秘密があります。
PS3のハードディスクは、ゲームのロード高速化やネットコンテンツのダウンロードに使われる、とされています。ですが、用途はそれだけではありません。ゲームタイトルの「アップデート」にも使われます。不具合修正はもちろん、機能やコンテンツの追加も行われます。この辺は、Xbox360でも変わりません。
違うのは、「様々なPS3に対応するパッチもダウンロードする」ということです。
様々な報道で、「PS3には様々な構成のものが存在する」ということはすでにご存じのことと思います。また、今後PS2のように、小型化・低価格化のためにチップ構成は変更されていくことでしょう。となると、ハードの構造は、発売時のものに比べ変化していくのは間違いありません。
となると、ソフトによっては挙動が違ったり、動かなかったりする可能性があります。PS2でも、初代機と現行の薄型では、100%の互換性が保たれているわけではないのですから。
そこで登場するのがハードディスク。ゲームを読み込んだ時に、本体のバージョンとソフトのバージョンを比較し、不具合などがある場合、パッチをダウンロード、正常な動作を保つわけです。
PS1・PS2と、シュリンクに伴う互換性維持に悩まされてきたSCEとしては、ここら辺で根本的な解決を図っておきたい、というところでしょう。
これらの事実が示すのは、SCEが「PSタイトル」を動かすプラットフォームを、すこしづつ仮想化しようとしている、ということです。厳格なハードウエアに1対1対応するのではなく、ある程度ゆるやかなハードウエア規定の中で動く「プラットフォーム」として規定しよう、という流れといえます。1種類のハードウエアではなく、複数のハードウエアにより「PSプラットフォーム群」を作り、より広く家庭の中に入っていこう、という計画を実現するには、必須の方策といえるでしょう。
ただ問題なのは、そうなることにより「わかりにくさ」が増大していくことです。「ソフトを入れれば即ゲーム」が、ゲーム機の良さでもありました。それが、よりシステム的になることで、「簡単さ」というメリットを失って行く可能性があるのです。(ニンテンドーDSとPSP、どちらが複雑な操作を必要とする製品か、を考えれば、イメージしていただきやすいのではないでしょうか)
この点については、SCE内部からも憂慮する声を聞いています。どれだけ、「ネットにつながっていても、シンプルに使える」という形を実現できるかは、SCE開発陣のお手並み拝見、というところです。
逆に言えば、この辺をきちんと解決できない限り、PS3は「コンピュータ」として成功しえないでしょう。
複雑なネット機器なんて、パソコンとケータイでもう十分。同じものを作っても、ニーズはないのですから。
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