次世代DVD、ようやく離陸
もめ続けていたAACSのライセンス発行が、いよいよ始まります。
暫定仕様で合意し、近日中に契約企業に対しライセンス発行が行われる模様です。
公開された暫定仕様を見ると、(リンクはAACS公開のpdf。英文)いくつか気になる点があります。
一つめは、ずっと問題とされてきた映像のアナログ出力問題。
結論からいえば、2010年12月31日までの期限付きで許可、で正式決定です。
当面は許可されるもののおそろしく厳しい制限ができた、ともいえます。
2010年末まで販売される機器ではHD映像のアナログ出力が存在することが認められるものの、その後の機器では、SD映像に落として表示されます。
さらに、2014年1月1日以降に生産される機器では、SD映像を含めたすべてのアナログ出力が認められなくなるのです。
アナログ出力しかないHDTVをお持ちの方は、どうやら2010年くらいまでにプレイヤーを買わねばならないようです。
「今使っているテレビがすぐムダになるわけではない」という点では、消費者の権利が守られました。しかし、結局最終的に買い換えねばならないという点では、我々の負けです。
皮肉な言い方をすれば、AACSの決定権を家電メーカーが持っていた以上、「急速すぎないならば買い換えを促進する程度の制約はウェルカムだった」ということでしょうか。とはいえ、最初から全面禁止の可能性もあったわけで、交渉に当たった関係者には敬意を表したいと思います。
なお、映像の出力に関しては、PCも例外ではありません。HDCPに対応したディスプレイ以外は著作権保護のないデバイスと見なされるため、次世代DVDの映像を再生する場合に制限が課せられます。PCで次世代DVDをHD映像で見る場合には、ドライブだけでなく、HDCP対応のディスプレイとディスプレイカードの購入が必要になります。また、これは実装上の問題ですが、PC内でより強固にセキュリティを保つため、次世代DVD再生用ソフトは、暗号化機能を持ったPCでのみ動作するようにしよう、と考える企業がほとんどです。そのためのフレームワークはWindows Vistaより搭載されるため、次世代DVD再生ソフトはVista専用として開発中、というのが実情です。
ただ、1点だけ救いがあるとすれば、次世代DVDには、著作権者の権利を守りつつ、ユーザー側が映像をコピーする仕組みが設けられます。それが「マネージド・コピー」です。
マネージド・コピーとは、ネットワーク認証と暗号化を組み合わせることで、PCやビデオレコーダーなどのハードディスク内に、次世代DVDに記録された映像データをコピーする仕組み。ディスク内に記録された任意のキーと、コピーする機器の任意のキーをあわせ、サーバー側に記録することで、「そのディスクがどの機械にコピーされたか」を認証します。現時点では、無償の場合1枚のディスクから1回のみのコピーが認められることになっています。課金システムと組み合わせることも可能なので、「複数回コピーするときは安価な追加料金で対応」ということもできるでしょう。
AACSで規定されたディスクの暗号化の仕組みは非常に強固なもので、仮にDVDの時と同様、暗号キーが漏れたとしても、それを無効化して新しいキーを規定する仕組みが盛り込まれています。そのため、DVDのような暗号を解読しての「リッピング」は、きわめて難しいといわざるを得ません。その上で、公式にコピーできる仕組みを設けることで、ガードをハックする行為そのものを封じ込めよう、という「飴とムチ」作戦です。
先日のCESでは、マイクロソフトがビル・ゲイツ氏のキーノートにて、パソコンを使い、HD DVDでのマネージド・コピーをデモしました。デモでは、記録されている最大解像度の映像(1080p)の映像の他、モバイル機器向けとして、SD解像度(480p)の映像もコピー可能、という形でした。
ハードディスク容量が大きく、処理速度にも余裕があることから、マネージド・コピーはPCに向いた機能、と言われています。Vistaでは標準でHD DVDに対応することがアナウンスされており、映像再生機能も持つといいます。CESでのデモは、VistaのMCE機能上に、映像再生とマネージド・コピーによるライブラリ管理が実装されていました。「パソコンをAVセンターにする理由」として、Vistaの拡販およびHD DVDの推進剤として、マイクロソフトは今後もマネージド・コピーを強く推してくるのは間違いありません。
マイクロソフトは様々な場所で、「マネージド・コピーはHD DVDだけのもの」と説明していますが、それは間違い。実際にはAACSで規定されるものであり、BDでも利用可能です。ただし、PCで利用する場合、BD用ソフトはサードパーティが準備することになるため、HD DVDよりもスタートが遅くなる可能性はあります。
(マイクロソフトがなぜそのような明らかな間違いを主張しづつけるのかは、次世代DVDを取材する関係者の誰もが疑問に感じているところなのですが)
とはいうものの、マネージド・コピーにも問題はあります。
第一に、まだまだ使えないこと。実は暫定合意には含まれておらず、今後決まる最終版まで繰り延べされています。著作権保護の方針やサーバー運用のポリシーなど、未定な部分が山積しているためです。関係者によれば、「マネージド・コピーの運用開始は早くても年内。十中八九、年をまたぐ」とのことなので、Vistaの発売に間に合うことはあり得ません。
第二に、「理由が完全に自由」とは思えないこと。例えば、映像の一部を編集して引用したり、勝手に画面を静止画として切り出すことは、許されないでしょう。引用と違法利用は紙一重(でも、重要な権利)であるため、いろいろ処理が難しそうな問題です。少なくとも、MAD映像を作て遊びたい、アナログソースを大切に保存しておいたほうが良さそうです。ご利用は計画的に。
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