W-ZERO3発表
ウィルコムが野心的なスマートフォン「W-ZERO3」を発表しました。
大まかな話はニュースリリースや様々なウェブメディアで語られていると思うので、ここでは取材中に得たものの、あまり他では出てきていない話題について補足しておきます。
1:なぜW-SIM採用なのか
W-SIMとは、PHSの通信周りの機能をカード型のモジュールにまとめ、端末開発の難易度を下げようという取り組みです。詳しくは以前の記事をご参照あれ。
さて、W-ZERO3はなぜW-SIM採用なのでしょうか?
W-SIMのメリットの一つは、端末と通信機能を切り分けることで、少数しか出荷しない端末でもビジネスにできる、という点があります。昨日発表されたW-SIM採用第一号機「TT」は、全色あわせても9000台しか生産されません。通常の携帯電話端末に比べ25分の1程度の生産量でしかなく、ふつうならビジネスになりません。
同社の八剱洋一郎社長は「あえて、この台数でもビジネスになる、と示すために台数を絞った」と説明しています。
ところが、W-ZERO3はそこまで出荷台数が少ないわけではありません。2005年度内で10万台を生産する予定です。「かなりコンサバに見積もったものなので、おそらく増産することになるだろう」(八剱社長)ということですから、数だけを見れば、W-SIMを採用する必要はないのです。
W-ZERO3でW-SIMが採用されたのは、開発の難易度を下げるためです。通信系と情報系を切り分けて開発できるため、不具合の切り分けが容易になります。しかもW-SIMは、インターフェースが従来のコンパクトフラッシュなどに比べてもシンプルなため、「単なるPDAを作るよりもさらに開発期間を短縮できた」(八剱社長)といいます。
「今後、ウチで出すこの種の端末は、すべてW-SIMで開発する」と八剱社長は言います。端末の性能アップ時にも、ジャケット部だけを交換していくことになります。
ただ、ビジネスモデルとしていまだインセンティブ・モデルを抱える以上、W-SIMと本体のセットを買う方が、単体のジャケットより安くなるのは間違いありません。今回も、W-SIMと本体のセットは「5万円以下」(会見でのコメントより)で販売されるものの、ジャケット単体を今後販売する時には、「値段がもう一声高くなる」(ウィルコム関係者談)と言います。
2:なぜOSが「ポケットPCエディション」なのか
W-ZERO3は、OSにWindows Mobile 5.0を採用しています。しかし、ちょっとおかしなところがあります。
Windows Mobileには、スマートフォン向けの「for SmartPhone」と、PDA向けの「for PocketPC」があります。今回はスマートフォンであるにもかかわらず、OSに「for PocketPC」が使われています。
ウィルコム関係者によれば、理由は「PHSだから」にあったようです。
「for SmartPhone」の技術仕様には、現在PHS向けのものがありません。そのため、「そもそも採用が難しかった」(前出関係者)のだそうです。
仕様を追加してもらうという判断もあったのですが、以下の問題もありました。
「スマートフォン向けは、ポケットPC向けに比べ、ターゲットとなるCPUスペックが低い。だから、動作速度などが遅くなる可能性がある。だったら最初からCPU速度に余裕があるポケットPC向けを採用し、スマートフォンになるよう作り込んだ方がいいだろう、と判断した」(前出関係者)というのが真相なのだとか。
現時点ではまだまだソフトの作り込みが終わっておらず、会見場のデモ機でパフォーマンスを云々するのは難しいですが、海外のスマートフォンに比べ、速度の面で有利なものになりそう、という予想が立ちます。あとは、シャープ・ウィルコム・マイクロソフトの開発陣のがんばりに期待ですね。
3:他の端末とどう住み分けるのか
ウィルコムの端末(はっきりいえば京ぽん)は、他のキャリアーのものに比べ、通信系の機能が充実しており、日本でスマートフォンを待ち望む人々に愛されてきました。先日発表になった新端末も、その路線を進めたものになっていました。
となると気になるのは、W-ZERO3と新端末のどちらを選べばいいか、ということです。大きさを考えると新端末の方がいいけれど、性能やディスプレイの広さ、(仮に可能だった場合)アプリケーションを入れ替えることによるカスタマイズ性の広さなどは、W-ZERO3の圧勝です。相当迷う人が多いのでは……と思い、八剱社長に水を向けてみると、
「確かに。自社内で食い合いがあることは、かなり覚悟してる」と話します。
その上で笑いながら以下のように語りました。
「でも、いままでは『迷う』ことそのものが贅沢だったから。今回は、他社以上に『迷えるうれしさ』を提供する、というのがコンセプト。存分に迷ってください。ただ、販促の現場で、それぞれの違いを細かく説明できるように手配するつもりではある」のだそうで。
個人的には、会見場でこそ問答無用でW-ZERO3でしたが、Bluetoothがないことや、やっぱり大きいことなどから、WX310Kにすべきか……とも思ってます。
ただ、タブレットPC&Onenote使いとしては、気になる機能もあります。
あまり知られていませんが、Onenote2003のサービスパック1以降には、ポケットPCと連携し、ポケットPC側で書いたメモを同期する機能が備わっています。(リンクは米国版での説明。スクリーンショットを見ると、どんな感じか一発で理解できます)
より手軽にアイデアメモを取り、それを統合管理するにはなかなかおもしろい機能です。以前、ポケットPCの評価時に試したことはありますが、実際に毎日仕事で使うとどうなるか……。試してみたい気もしています。
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受信: Dec 22, 2005 5:43:58 PM

コメント
返答ありがとうございました。
なるほど、情報通信事業本部でしたか。それをお伺いしたかったのです。
携帯電話専門の部署でなくとも、W-ZERO3のような製品を作り出せたという点が面白いですね。
ウィルコムにとっては実績となり、今後のW-SIMの売り込みにも有利に働くと思います。
投稿者: マッキー (Oct 22, 2005 4:17:13 AM)
100%確認したわけではありませんが、ご指摘の通りです。
W-ZERO3の開発は、シャープの「情報通信事業本部」が担当しています。ここは、PCやザウルスなどの開発を手がける部署です。
それに対し携帯電話は、通常「通信システム事業本部」が担当します。
双方でノウハウの共有がまったくなかったとは思いませんが、携帯電話開発に習熟した部隊でないところが開発できたのは、W-SIMを使っていたから、という可能性が高いでyそう。
投稿者: 西田 宗千佳 (Oct 21, 2005 11:48:43 PM)
興味深いエントリーですね。特に、「迷ううれしさ」がコンセプトというのは、
ウィルコムの勢いを象徴している感じがして、嬉しく思いました。
ところで、 W-ZERO3はシャープの携帯電話部隊が
手がけられたものなのですか、それとも、PDA部隊が
手がけられたものなのですか。
シャープの開発体制を知らないので、上のような括り方が
適切かどうかも分からないのですが。要するに、携帯電話の
開発経験に乏しくても、W-SIMを使えば機器は開発出来るのかを
知りたいわけです。
投稿者: マッキー (Oct 21, 2005 11:20:43 PM)
その通りですm(-_-)m
ご指摘感謝いたします。修正いたしました。
投稿者: 西田 宗千佳 (Oct 21, 2005 2:33:27 PM)
難易度を「下げる」という意味でいいんですよね:-)。
投稿者: worship (Oct 21, 2005 1:43:08 PM)