2009.05.30

ひたすら海外取材

ご無沙汰しております。

現在、成田のラウンジでフライト待ちです。
これから、E3>WWDCと連続で取材に入るための海外出張に出ます。
どちらも色々と噂が先行しているイベントではありますが、なにが出ますやら。

この時期にLA・SFOというと、主にインフルエンザ的な意味で色々あるわけですが。
とりあえず帰国後しばらくは、自主的に自宅中心の仕事とさせていただきます>各位

現在進行中の書籍の原稿を抱えて行くことになるので、少々気が重いのですが、誘惑は海外の方が少ないので、ヨシとしておきましょう。
(本当は書き上げて行く予定だったんですが・・・・申し訳ないです>各位)

記事は例年同様にAV Watchの連載に掲載される他、まとめ記事的にアサヒ・コムのコラムでも扱うことになるかと思います。よろしくお願いいたします。

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2009.01.26

告知2題+α

まずは、告知を2つ。

ウェブ媒体のasahi.comにて、新しい連載を開始します。
タイトルは、「斎藤・西田のデジタルトレンド・チェック」
見ての通り、1人ではなく、友人であり組んで仕事をすることも多いライターの斎藤幾郎氏と、(基本的に)1週間交代で、デジタル関連のトレンドをご紹介していく連載です。
毎週木曜更新ですので、お楽しみいただければと思います。

「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先に来るもの」、なかなか好調に売れています。
ありがたいことに、先週火曜には、さらなる増刷(三刷目)が決定しました。
たまたま立ち寄った某書店では、「新書新刊売り上げランキング」で第一位になったらしく、ポップ付きで並んでいました。思わずニヤニヤしてしまったのですが、傍から見るとさぞ気味悪い風景だったことでしょう。
今週も、この勢いを維持してくれれば……と期待しています。

さて、「クラウド・コンピューティング」読者の方からメールを2件いただきましたので、その疑問にお答えしておこうと思います。

一つ目は「なぜ、ウィキペディアなどやSNSについて触れていないのでしょうか」というもの。
たくさんの人々が情報を寄せ、それが集約されてひとつの形になることは、いかにもクラウド的なもののように見えます。非常に大切な要素ですし、大きなトレンドでもあります。我々の生活に、ありとあらゆる影響があるのは間違いありません。

ですが、わたしはクラウドを語る中で、あえて「コミュニケーション」の要素を切りました。
なぜなら、先に挙げた例は、おそらく「クラウドとは関係ない」からです。
分散した知の集合(すなわち「集合知」)とコミュニケーションの簡便化は、ウェブとネットワークの持つ基本的な要素であり、クラウド以前からあったこと。
クラウドがそれを加速する可能性は高いのですが、「だからクラウドが生まれた」ということはできません。
極論すれば、クラウドは「コンピュータとネットワークのアーキテクチャ(構造)」に関する議論であり、知やコミュニケーションのあり方とは、また別の意味を持つと考えられます。さらにいえば、クラウドは「リソースをどう生かすか」の問題といってもいいでしょう。
ネットに関する議論の中では、「コミュニケーション論」「技術論」「法律論」「経済論」などが入り交じって語られることが多くなっています。もちろん、それぞれを独立して語れない場合も多いのですが、クラウドの場合には、「リソースにかかわる議論」に切り分けることで本質がわかるだろう、と考えました。その結果、わかりやすい内容にまとめられたと思うのですが、いかがでしょうか?

二つ目は「本当に企業でGmailを使っても、セキュリティは問題ないのですか?」というものです。
メールには機密文書も含まれる場合が多く、それを「社外のストレージ」に貯めるのは怖い、ということでしょう。
本文中でも述べたように、もっとも重要なことは、信頼できるサービスを利用する、ということなのですが、工夫が必要になる場合もあるでしょう。
例えば、大手SIerで、全従業員1万人のメールシステムとして「Google Apps Premire Edition」を導入した富士ソフトの場合、単純に使うのではなく、いくつかの工夫を行っているようです。
例えば添付ファイルは、Gmailサーバーに置かず、「社内に置いたセキュアなストレージへアクセスするリンク」をメールの中に記載する形になるよう、カスタマイズが行われています。
また、VPNとGoogle Appsを同時に使えるようにするため、シングル・サインオンの仕組みも導入したとのことです。
このように、「必要ならばカスタマイズ」し、リソースの流動化・分散化を行うというのが、企業内でのクラウドのあるべき姿、ということになるでしょう。

……え? なんでこのエピソードが本に入っていないのかって?
残念ながら、執筆後に入ってきた情報だからです。非常に動きの速い分野だけに、執筆終了からの1ヶ月半で、色々変化が起きている、ということです。(オバマ氏も、ブラックベリーを使い続けられるようになったみたいですし)

以上、補完情報でした。

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2009.01.16

重版決定しました

クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先に来るもの、重版が決定しました。
お買い上げ、多謝いたします。
実質的に8日より発売になったのですが、休み明けの13日には重版が決定したとのこと。これまでに私が出した本の中でも、もっとも速いペースで売れています。まだお手にとっていない方は、ぜひご一読をお願いいたします(笑)

さて、CES取材でも感じたのが、この本で書いた傾向は、はっきりと、より急速に現実化する方向にある、ということです。
アメリカの場合、テレビのインターネット接続が急速にすすんでいます。Intel/Yahooが規格化する「TV Widget」を採用するメーカーが激増している状況で、米国市場大手の場合、パナソニック以外はすべて賛同し、対応テレビのデモンストレーションを行っていました。あるメーカー担当者は次のように話します。
「組み込みの貧弱なウェブブラウザで、無理矢理独自のサービスを表示するような形は、もうニーズに合わない。日本でも同じようなサービスを導入できればいいのだけれど」
また、ソニーやサムスンがChumbyに賛同、ChumbyのWidgetをそのまま使える機器の市場投入を検討している、というのも、同じ流れといえるでしょう。
テレビなどの家電で使えるネットサービスを、PCと同じ技術で、同じものが使えるという流れは、まさにクラウドのひとつの形を表したものです。ある意味当然のことではありますが、「ネット上に提供される情報」「ネット上で公開されるサービス」はPCのものではなく、ネットへの接続機能を持った、あらゆる機器で使えるべきものである、という姿が、ようやく実現しつつある、といっていいでしょう。

他方で、アメリカ市場の冷え込みは、かなり深刻なものとなっています。幸いなことに、昨年末のテレビ市場・ブルーレイ市場は堅調であったものの、消費者が遊興費に充てる額が大幅に減りつつあるのは事実。ラスベガスの街は、これまでにないほど人が少なく(といっても、相当な人出であるのは事実なのですが)、普段なら数百ドルもとるような超高級ホテルでも、一泊90ドルで泊まれる、というくらいの不景気ぶり。家電メーカーなども、コスト削減のため、人件費のカットはもちろん、設備投資を大幅に凍結するのでは、大規模投資計画の見直しが続くのでは……との噂が耐えません。
「なら、クラウドなどというまだよくわからないものへの投資はしないのでは?」と思われるかも知れません。
確かに、ある程度減速はするでしょう。しかし、むしろこのような厳しい状況に対応するために、クラウドの導入を考える企業がでそうです。
企業にとってクラウド化するということは、企業のコンピュータ・リソースの一部を、ニーズにあわせて流動化できるということでもあります。言い方を変えれば、かの悪評高き「派遣社員利用による雇用の流動化」に近い特質をもっているわけです。クラウドを採用したからといって、コストはさがりません。ですが、その特質をうまく使うことで、社内リソースの有効活用が可能となるのは事実です。
設備投資がきびしい中で、いかに適切にコストをかけるか。
平凡でシンプルな話ではありますが、現在クラウドが置かれているのは、そういう状況なのです。

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2009.01.04

あけましておめでとうございます

おくればせながら、新年のご挨拶を申し上げます。
本年も筆者の記事を、各媒体にてご愛読いただければ幸いです。

年初はAV Watch・CESレポートからの仕事始めとなる予定です。
その他Web媒体では、少し遅れてASCII.jpに、主にPC関連のレポートを掲載予定です。

なお、1月中に、別途新たにWeb媒体での連載を開始する予定です。
告知できるタイミングになりましたらご報告させていただきます。

まずは、新書「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先に来るものをよろしくお願いいたします。

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2008.12.29

1月13日に新書を出します

さて、告知です。
1月13日に、新書を一冊出します。

Cloud 書名:クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先に来るもの

(クリックするとアマゾンへ飛びます)
ISBN:978-4-02-273254-5
発売元:朝日新聞出版
判型:新書
定価:本体740円
(税込み777円)
2009年1月13日刊行予定
(アマゾン上の表記では8日)

テーマはずばり「クラウド・コンピューティング」。
……というと、「はやりにのってバズワードの本を出すの?」と思われる方もいそうです。
クラウド・コンピューティングが流行りのバズワードであることは否定しません。数年後にはあまり耳にしない言葉になっているかもしれません。
ですが、当方にはまた別の狙いがあります。
私は、言葉はなくなったとしても、「クラウド的」なコンピュータの使い方は定着するだろう、と予想しています。なぜなら、クラウド的な使い方は、ある程度ネットを活用している人にとって「当然」のことだからです。
(だからこそ、「クラウドなんて、わざわざ語らなくても……」という人がいるのでしょう)

ですが、多くの人にとってはそうではない。
「Gmailが便利であること」「iPhoneが便利であること」「ネットブックが売れること」が、ひとつの軸でピン、とくる人は意外と少ないのが実情でしょう。また、ピンとくる人でも、その「軸がなにか」を簡単に説明できる人は少ないはずです。

「ピンとくる人」と「こない人」の間をつなぎ、「今なにが起きているか」を語っておく、というのが、本書の狙いです。はっきり言って初心者向け(もっといえばオジサン向け)の本ですが、面白く読んでいただけるのではないか、と考えています。
少なくとも、「パソコンやケータイで情報管理を効率化するノウハウ本」としても読めるようになっておりますので、ご一読いただけると幸いです。

ちなみに現在、この他2冊ほどの書籍プロジェクトが進行中です。
1冊は比較的近々、もう1冊も遠くないうちに発表できれば、と思います。
よろしくお願いいたします。

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今年もお世話になりました

今年も、更新が少なく申し訳ないです。
年明け前に、久々に更新させていただきます。

今年もなんとか乗り切ることができました。ひとえに、読者の皆様と、仕事をご依頼いただくメディアの方々、そして、取材にご協力いただく企業・個人の皆様のおかげです。
誠にありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

本来はもうちょっと更新すべきだろうと反省しているところですが、なかなか手が回らないのが実情で……。
ほぼ毎日更新できる小寺さんは尊敬します。(いや、ほんとに>小寺さん)
来年は、本田さんよりは更新するのが目標です。(冗談ですから>本田さん)

年初は、例年どおりCES取材から始まります。ご愛顧よろしくお願いいたします。
さすがに今年のCESのように「乗り継ぎ中の空港で大ニュースがとびこんで来る」ようなことはないだろう、と思いますが、なにがでてくるやら。

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2008.05.29

論点は思ったより単純なんではないか

ダビング10を巡る議論が大変なことになっていますが……。
一応私も意見を述べておこうかと思います。

と、その前に、ちょっと日常の話を。

職業柄という部分もあるのですが、私は本が好きです。フィクションもノンフィクションも、雑誌も学術書もマンガも洋書も写真集も、分け隔てなく愛しています。出版不況で活字はなかなか読んでもらえない事情がありますが、とはいえ、私のレベルの「本好き」は、そんなに珍しい存在ではないでしょう。ひとたび本屋に入ると、「とりあえず一山」という感覚で本を買ってしまいます。

そういうことを続けていると、習慣的に「断る」ことがでてきます。
それは、「書籍カバーと袋をもらわない」ことです。そんなにエコを意識した行動ではないですが、ついていると整理が大変ですし、やっぱりゴミも増える。で、レジでは「袋とカバー、いいです」と答え、鞄に本を詰め込むことになるわけです。

ところが数年前から、レジで「袋とカバー、いいです」と言うと、店員の方に妙な顔、もっといえば「イヤな顔」をされることが増えてきました。
「そんなに変なことかい?」と思っていたわけですが、ある日、その理由がわかりました。

どうしても欲しい本が見つからず、ある新古書店に行きました。なんとか見つけ出し、レジでいつものごとく、「袋とカバー、いいです」と答えます。
するとその店の店員は、驚くようなことを言い出したのです。
「では、出口までついていっていいですか」

理由は、万引き(いや、「窃盗」ですね)との混同防止です。

いうまでもなく、この店員の処置はとても失礼なものです。お金を払った直後のお客を「窃盗犯であろう」と見なす行為なのですから。あきれつつ、袋に入れてもらって店を出たわけですが、その瞬間、怒りはまた別の発想・感情にかわりました。
そこまで店員が言う、ということは、それだけその店で「書籍の窃盗」が多い、ということなのでしょう。
また、多くの店で袋やカバーをつけようとするのも、窃盗との混同を防ぐ目的があったわけです。

いくつかの書店では、最近、袋やカバーを断ると「では、店内ではレシートをお持ちください」と断るようになっています。そういった書店はたいてい、大型かつ構造が複雑で、「会計後に店内に長く滞留される」可能性のある店舗です。これも、決して気持ちのいいものではありませんが、前出の新古書店よりはるかにマシな対応といえます。

これらのことを聞いても、書店に怒りや理不尽さを感じる人はあまりいないでしょう。
理由は、「書籍の窃盗」による被害が、書店に対し大きな痛手であり、深刻な問題であることを知っているからです。

さて、ここで話はダビング10に戻ります。
どうやら、家電メーカー・コンテンツホルダー・ユーザーの間で、かなり感情的なしこりができつつあるようです。
(先日、ある家電メーカーの人物と雑談中も、「ダビング10がチャラになったら、開発にかかった数千万円、誰が保証してくれるんでしょうね」と愚痴をこぼされました)

結局問題は、「強い著作権保護や保証金を導入せねばならないほど、コンテンツホルダーは損失を被っているのか」が理解できない、という点にあるのでしょう。ユーザー側からはもちろん、メーカー側からも、コンテンツホルダー側とそういった状況に関し、十全なコミュニケーションが出来ているとは思えません。
これは前出の書店の例でいえば、「書籍の窃盗」の被害額を知らない状態で、件の新古書店とおなじような対処をされている、という状況になります。
無論、DRMなどないほうがいいに決まっています。
ですが、「本当に被害が深刻」なのならば、我々が受ける利益の分、制約を課せられてもしょうがないでしょう。
それがなく、「まず規制ありき」「民は之に由らしむべし之を知らしむべからず」では、納得できるはずがありません。

きちんと説得する。説得できないなら制約を課さない。

結局論点はこれだけなのです。
もちろん、「制約」が、レシートや袋をもらう程度の「軽いもの」であってほしいのは、いうまでもありません。EPNは、その状況に近い現実解だったのですけれど。

「私的複製」「録画」がコンテンツに与える影響については、また別の側面もあるのですが、ちょっと長くなりそうなので、また次の機会(まあ、数日以内)に。

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ご無沙汰です&告知

ちょっとご無沙汰です。
今回は本を執筆していた……というわけではないのですが、少々多忙にて更新が滞ってしまいました。
(とはいうものの、次作のプロジェクトはスタートしました。内容をお伝えできるのはずいぶん先になると思いますが)

おかげさまで、拙著「美学vs.実利」の販売は好調なようです。皆様のご愛顧に感謝いたします。
blogからアフィリエイトを通じご購入いただいた方も、予想以上にいらっしゃいました。
そこからの収入で、ありがたく「ヘアスプレー」BD版を査収させていただきました。
(逆にいえば、その程度の売り上げとご理解ください。元々アフィリエイトにはまったく熱心でないサイトなのですが、今後も、本文中で採り上げるのは基本的に自分の著作のみとする予定です)

「書店でみつからない」とのお声もあるようですが、申し訳ありません。素直にアマゾンなどのオンライン書店でお買いいただくか、注文いただくのが良いと思います。
そこそこの冊数を刷っていただいているのですが、全国の書店に行き渡るほどではないのです。現在の出版業界の状況では、「ベストセラー以外は、大多数の書店には並ばない」ものなのです。残念ながら。

また、告知が遅れましたが、5月よりASCII.jpにて「西田 宗千佳のBeyond the Mobile」という連載を開始しました。AV Wacthの連載が「ほぼ取材、時々レビュー」だとすれば、こちらは「ほぼレビュー、時々取材」なものになるかと思います。ご一読ください。

基本的に隔週での掲載で、すでに2回分の掲載を終えています。ちなみに次回は、上のリンクの写真にも写っている、アレです。

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2008.03.31

リモコンとボタン数

デジタル家電、特にデジタルテレビとビデオレコーダーに寄せられる苦情の中でもメジャーなものの一つが、「ボタンの数が多すぎる」という点です。
ユーザー調査を兼ね、家族や知人などの中でもデジタルモノに強くない人をピックアップして話を聞くと、ほぼ100%、この不満を口にします。

ですが、私は取材の中で、複数のメーカーの家電開発者から、次のような、意外なコメントを耳にしています。
「デジタル家電のリモコンにボタンが増える」原因は、ユーザーからの「わかりにくい」というクレームにあった、と。
ボタンで操作というと、なんとなくマニアックな印象をうけますが、リモコンのボタンを減らすな、とクレームをつけた人の多くはマニアではなく、むしろライトな人々。年齢層も比較的高めで、40代以上であったといいます。理由は「メニュー構造だとわかりにくい」からです。

家電をデジタル化することと、リモコンのボタンが増えることは、本来ダイレクトにつながっていません。それどころか、むしろ逆に減らすことができます。各種機能をメニュー内に配置したり、「モード」によってボタンの機能を変化させたりすることで、機能とボタンを「1対1対応」させる必然性がなくなるからです。
番組選択はもちろん、早送りや巻き戻しといったことも、すべて「十字キー」と「決定キー」の組み合わせで操作可能となります。 すべてを十字キーで操作するわけにはいかなくとも、VHS時代よりもボタンをシンプル化できるのではないか、と彼らも期待したわけです。

ところが、反応は彼らの予想とは大きく異なっていました。
「メニューをたどるのはわかりにくい。機能はボタンに割り当てて欲しい」とのクレームが寄せられたのです。

十字キーでメニューを操作する、ということは、機能がどこにあり、どう操作すればいいかを理解する必要がある、ということです。その大半は単純なものではありますが、それを受け入れられない人も少なくありません。
おそらく、このblogを読んでいるレベルの方には信じられないことでしょうが、DVDを再生して映像でなくDVDメニューが表示されると、「どこを押せば再生できるかわからない」と思う人もいるのです。実は、私の父もそうなのですが。

そういった人々の場合、「メニュー」というもの、そのものが苦手であるようです。たとえリモコンにボタンが増えようと、番組表なら「番組表」、再生なら「再生」、放送切り替えなら「放送切り替え」と、名前のついたボタンを押す方が分かりやすかったのです。だから彼らは、「リモコンにボタンを増やせ」とクレームを入れたわけです。

しかし、ユーザーは「メニュー苦手派」だけではありません。ボタンが多いことに違和感を感じる人が多いのは、冒頭で述べたとおりです。
というわけでメーカー側は、多くの人が不要なボタンをフタやスライドで「隠す」ようにして、クレームを避けるようなデザインを目指したわけです。それが必ずしもうまくいっていないのは、みなさんもご存じの通りです。

と、そんな中で、読んだのが以下の2つの記事。
こどものもうそうblog ソニー銀行「人生通帳」、「ゲーム感覚」とはどういうことか

キャズムを超えろ! Wiiテレビの友チャンネルが家電業界に与えたメガ・ショックとは 

どちらも、「メニューによる操作」によるリモコンUIの改善について、非常に示唆に富んだ内容です。

ここで、私が体験した一つの例を示しましょう。
主人公は、私の父です。
すでに述べたように、彼は「メニュー」が苦手です。携帯やパソコンでメールは打てるのに、DVDのメニューやデジタル家電のメニューは「ピンとこない。よくわからない」と言います。どうやら、「ここを押せばこうなる」と決まっているUIはOKでも、ソフトによって「似ているが違うようなメニュー」が出てくるものはイヤだ、という発想であるようです。
そんな彼に、ある機器を見せた時のことです。
「面白い。わかる。これなら使いたい」
彼の口から出たのは、完全な「賛辞」の声でした。
彼に渡して使わせた機器とは、iPhoneです。
ご存じのように、iPhoneはほとんどボタンがなく、操作を究極まで「仮想化」した機器です。ですが彼は、普通の単純なメニューはダメなのに、iPhoneは理解できた。非常に奇妙なことに思えます。
これはあくまで私の予想ですが、なにも「ゆびをすべらせるとスクロール」とか、「広げると拡大」といったジェスチャーに起因するものではないんだろうな、と思います。おそらくは、一つ一つの動作がシンプルな上に、「操作と動作が1対1で対応」していて、「これをやるとどうなるか」が予想しやすいからではないでしょうか。このあたりは、「Wii Sports」が多くの人に受け入れられた理由の本質にも通じるのではないか、と考えています。
同じように「動作」で操作するゲームでも、「はじめてのWii」はさほど理解しやすかったわけではないようですし、iPhoneの操作のうち「再生中のアルバムの中からのぞみの1曲を呼び出す」という行為は、画面の長押し>曲リスト呼び出しという動作がピンとこなかったらしく、かなり戸惑っていました。
しかも、iPhoneやWii Sportsの操作感は、さわっていても「楽しい」。前出のblog記事にもありますが、「さわると楽しそうだ」ということは、操作に対する拒否感を減らす上で、非常に重要なこととなります。

以前、ソニーでXMBを開発チームに話を聞いた時、次のようなキーワードが出てきました。
「UIは、『釣り』と『漁』のバランス」と。
魚を捕るなら、釣りよりも網などを使った「漁」の方が効率的。でも、それだけでは楽しくない。「釣り」は漁と同じことを目的としていながらも、効率より「楽しさ」を重視したものといえます。となると、コンシューマ機器のUIは、効率と楽しさのバランスをとることが重要になるわけです。
(そういう風に考えると、現行のBDレコーダーで採用されている動作の遅いXMBは「釣り」不足で、魅力が足りませんね)

UI開発には、多くの人が想像する以上のコストがかかります。各社の製品を見る限り、まだ数社しか「UIに投資する価値」に気づいていないように見えるのは、少々寂しいことです。

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2008.03.17

「美学vs.実利」 追補版 その1

拙著美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史が発売されて、3週間ほどが経過しました。
現在のところ、おおむね好評なようで、ほっと胸をなで下ろしているところです。
(ご期待に添えなかった方々、申し訳ありません。中には反論したいと思うコメントもありますが、ライターは「世に出したもの」で語るのが本道。ご批判には今後の執筆物でお答えしたいと思います。)

さて、これから時々、「美学vs.実利」の追補コンテンツを公開していこうと思います。
あれだけの長さの書籍ですが、それでも構想段階で「ネタだし」したすべてのエピソードが詰め込まれているわけではありません。脇道と思えるエピソードや、技術的な説明が大量に必要な割に他のエピソードとのつながりが悪い話題、事実に近いと「想像」「分析」はできるが、確たる事実や明確なコメントが存在しない事象などは、全体を見た上でカットしています。
(といいますか、一般的な雑誌記事などの場合、「取材したネタの8割を捨てて熟成する」のがこの仕事です)

ですが、そのまま捨ててしまうには惜しい話があるのもまた事実。
そこで、削ったネタのいくつかを、ここで公開したと思います。既読の方には追補情報として、未読の方には「これよりもっと面白い情報があるよ」という広告として、ご参考にしていただければ、と思います。
(宣伝必死だな、って? そりゃあ必死ですよ。本人ですもの)

追補版その1として、PS2向けのネットワーク・サービスが企画されていた時期の話題をお伝えしましょう。6年近く前の話ですが、現在の「ネット配信とディスク流通」に関する命題を考える上で、非常に示唆に富んだ話題となっています。

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 PS BBに向けての準備は、実はPS2開発の初期段階から存在した。そのため、SCEが作ったPS2以降のハードウエアには、ある工夫がなされていた。それは、「DNAS」と呼ばれるものだ。

 販売されたすべてのPS2・PSP・PS3には、一台づつ、固有のID番号が割り振られている。また同様に、PS2・PSP・PS3向けのゲームディスクには、1枚づつ、やはり固有のIDが書き込まれている。これをマッチングする仕組みが「DNAS」である。

 ネットワークにおいては、つながれた機器やユーザーを認証することが大きなテーマとなる。パソコンなどではIDとパスワードを使って個人を識別するのが一般的だが、コンシューマ機器では、より厳格かつ簡単なものが必要とされる。

 そこで久夛良木たちが考えたのが、出荷するすべての機器とディスクにそれぞれ別々のIDを割り当て、ネットワーク上でそれぞれをひもづけることで認証に使う、というアイデアである。世に出たのはPS BBが発表されて後のことであるが、その特質上、PS2開発段階で仕込んでおかなければならないのはいうまでもない。

 DNASは、PS2・PSP・PS3向けのオンラインゲームにて、不正コピーされたディスクや不正改造されたハードウエアを排除するために現在も使われているが、その狙いはもうすこし広いものであった。

 PS BBはその計画の中で、ゲームのオンライン配信を狙っていた。だが他方で、ビジネスプラン構築の段階で、「オンライン配信の難しさ」も明らかになっていた。

 それは、高度なブロードバンドネットワークも、「混雑」にはきわめて弱い、ということである。

 PS BBが公開された2001年は、日本においてブロードバンドサービスが花開いた時期である。月額固定・最大速度数Mbpsという、2000年までとは速度で2桁上・料金でも半額という「破壊的」サービスではあったが、ことそれを支える「基幹回線」の整備は、それほど進んでいなかった。当時の基幹線は最速でも数Gbps。数千人が一度に制限速度いっぱいを使い切るようなデータのダウンロードを始めると、簡単にパンクしてしまう。

 また、PS.comのパンクが示したように、ちょっと利用者が集中すると、サーバーとルーターの処理能力は簡単に限界を超え、正常に処理が行えなくなる。このことは、ブロードバンド回線の設計が始まった当初から予想されていた。そのためNTTグループとソフトバンクは、それぞれネットワークを「地域単位」で整備、データを地域単位で共有し、ネットワーク全体での負荷上昇を抑える、といった仕組みを用意していた。

「回線の方はまだいいんです。通信会社が一生懸命投資したものの、まだアプリケーション(用途)がなくて余裕が大きい。しかし、サーバーの側はそうではないからね」

 久夛良木はそう話した。

 そこで彼らが考えていたのは、「ダウンロードに頼らず、データをディスクで配布する」という手段だ。

 一見矛盾するようだが、彼らが考えていたのはこういうことである。

 例えば、ゲーム雑誌などの付録として、「オンラインで配信する予定のゲーム」が数十本入ったディスクを配る。その中のゲームをプレイする場合には、PS BBに組み込まれたハードディスクへゲームをコピーした上で、PS2とディスクのID(すなわちDNASの仕組み)を使い、「オンライン認証と決済」を行ってプレイさせるわけである。

「現在の物流の力というのは、ものすごいものがある。大多数の人が欲しい、と思うものを同時に届けるなら、当面光ディスクを使うのが現実的ですよ。その上で、ネット認証と組み合わせれば、双方の良さを生かすことができる」

 ディスクをあくまで「配布メディア」ととらえ、プレイする段階では「ハードディスクでも光ディスクでもかまわない」とする発想は、iPod以降の音楽業界に似た形といえる。

「着うた」や「iTunes Store」などのオンライン配信が脚光を浴びる音楽業界だが、ビジネスの主体はいまだCDという物理メディアの販売である。だが現在、普段聞いているのがCDそのものである、という人は減っている。パソコンでデータ化し、iPodなどの「デジタル音楽プレイヤー」で聞く方が便利だからだ。これは、CDが「音楽を再生する媒体」から、「音楽データを消費者に届ける媒体」に変化した、ということでもある。

 CDにとって不幸であったのは、「違法コピーの手段」と「データ化する手段」が同じであった、ということだ。CDには違法コピーを防止する仕組みがなかった。何度かCDに違法コピー防止の仕組みを設け、データ化と共存することがトライされたが、ユーザーの利便性をそぐ形でしか実装できなかったことにより、結局消費者の支持を得ることができなかった。

 その反省からか、次世代光ディスクであるブルーレイ・ディスクでは、ポータブルデバイス向けの映像データを、元の映像とは別に収録して正当にコピーする「マネージドコピー」という仕組みが導入された。またアップルは、20世紀FOXと共同で、映画のDVD内にiPod向け映像を収録、ネット認証を経てコピーを許諾する「iTunes Digital Copy」をビジネス化している。

 PS BBとDNASで久夛良木達が狙っていたのは、これらのように、ゲームでも光ディスクを「再生媒体」から「供給するための中間媒体」にすることだったのだろう。

 久夛良木はネットの可能性に魅了されていたものの、過大評価はしていなかった。筆者の見るところ、ネットの「物流手段としての有用性」よりも、「時間・距離を超えて即応性のあるコミュニケーションが可能である」ことを重視していたようだ。

「光ファイバーのいいところはたくさんのデータを転送できることだけじゃない。上りと下りの速度が同じで、相互にリッチな情報がやりとりできることが重要です。100Mbps同士じゃないと成立しないようなサービスができれば」

 PS BBが発表された後、久夛良木は筆者にこのように説明した。ゲームは「リアルタイム性」を最大限に生かした娯楽である。ネットワークに関しても同じような理想を追求したい、と久夛良木は考えていたようだ。

 PS BBが発表される1年半前である2000年8月、SCEは、NTTドコモと提携、PS1向けの「携帯電話接続ケーブル」と「iモードブラウザ」、そしていくつかの対応ゲームを発表している。当時の携帯電話は、通信速度が9600bpsと遅く、ブロードバンドとは縁遠い印象がある。だが久夛良木達にとっては、これが「ブロードバンドにつながる布石」でもあった。

「iモードとつないだのは、これが即応性が高く『常時接続』に近いサービスだから。アナログモデムでは、『つなげば即ネット』という形が実現できない」

 当時久夛良木はそのように説明していた。またこの提携では、iモードを介してゲームのサービス料金を課金する、といった仕組みも検討されており、「敷居の低いネットワーク」としてiモードを活用しようとしていた節が見える。

 だが結論からいえば、これらの施策はほとんど実を結ばなかった。それにふさわしいビジネスモデルを構築し、具体的なサービスを打ち出すことができなかったからだ。SCEとしての本格的なサービスは、PS3と同時にスタートする「Playstation Network」(PSN)まで棚上げされることになる。その間にマイクロソフトは、ゲーム機向けネットワークサービスとしてはきわめて先進的な「Xbox Live」を構築、ユーザーの心をつかむことに成功する。

 構想の先進性とは裏腹にビジネスの開始が行えない、という「方針の不徹底」こそが、PS2時代から続くSCEの、最大の問題点といえるだろう。

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